フリー素材の「商用利用OK」とは?ライセンス表示の読み方と使う前に確認すべきこと
「商用利用OK」のイラストを自社サイトのバナーに使い、数か月後にそのバナーをTシャツにして売ろうとしたら、規約に「素材を主体とした商品の販売は禁止」とあった——。フリー素材のトラブルは悪意ではなく、「規約を読んだつもりで読んでいなかった」ことから起きます。
やっかいなのは、「商用利用OK」の4文字が指す範囲がサイトごとに違うことです。あるサイトには「1つの制作物に20点まで」という数量制限があり、別のサイトには無制限。1つのサイトの感覚で別のサイトの素材を使うと事故が起きます。なお本記事は一般的な解説であり、個別案件への法的助言ではありません。迷うケースは弁護士や弁理士にご相談ください。
「フリー」は3つの別物を指している
混乱の大半は、「フリー」が3つの意味で使われていることに起因します。
意味1:無料。 ダウンロードにお金がかからないという意味だけで、著作権の情報は含まれていません。無料でも著作者は権利を持ち続けており、利用者は「規約の範囲内で使ってよい」という許諾を受けているにすぎません。いらすとやは「著作権は放棄しておりません」と明記し、Loose Drawingも著作権は自社に帰属するとしています。
意味2:著作権フリー。 法律用語ではなく業界の慣用表現で、多くは「使うたびに個別の許諾や使用料が不要」という意味です。実態は条件つきの利用許諾なので、この言葉を見たら「では規約はどこ?」と探しに行くのが正しい反応です。
意味3:パブリックドメイン。 保護期間が満了したか、権利者が放棄した状態です。著作権法第51条第2項は存続期間を「著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後)七十年を経過するまでの間」と定めています(e-Gov 著作権法)。放棄の意思表示にはCC0がよく使われますが、CC0でも商標権や、写り込んだ人物の肖像・プライバシーに関する権利までは処理されません。
素材ページで「フリー」を見たら、①料金 ②規約の所在 ③クレジットの要否 ④禁止事項——この4点を確認するまでは、「使えるかもしれない素材」にすぎないと考えてください。
押さえておく著作権の基礎
著作権は登録しなくても発生する
「©マークがないから自由に使える」は誤解です。著作権法第17条第2項は「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない」と規定しています。これを無方式主義といい、作品が創作された瞬間に権利が発生します。保護対象は第2条第1項第1号が定義する「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」です。
「使う」とはどの行為か
素材利用でよく関係するのは3つです。
- 複製権(第21条)「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」——ダウンロード、コピー、印刷が該当。
- 公衆送信権(第23条)「著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する」——サーバーにアップしてWebで表示する行為はここ。ブログへの画像掲載は複製と公衆送信の両方が絡みます。
- 同一性保持権(第20条)「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」——著作者人格権で、譲渡できません。素材サイトの「加工OK」表記はこの点への了解を示す意味を持ちます。逆に加工可と書かれていない素材を大きく改変するのは、商用利用が許されていてもリスクがあります。
私的利用と商用利用は別の軸
第30条第1項は私的使用のための複製を認めますが、その範囲は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」と、一般に相当狭く解されています。自分のスマホの壁紙にするのは私的使用に当たると考えられる一方、広告を貼っていない個人ブログ、無償のNPOの活動報告資料、社内会議用の資料は、いずれも私的使用の範囲外と考えるのが一般的です。「非商用=私的利用」ではありません。
規約が言う「商用利用」はさらに別の切り口で、多くのサイトは「収益を得る活動に関わる利用」を広く商用と捉えています。定義は各サイトが決めているので、法律用語として一般化せず、そのサイトの定義を読むのが正解です。
クリエイティブ・コモンズの読み方
海外素材やWikimedia Commonsで頻繁に出会うのがCCライセンスです。現行は4.0で、公式サイトでは6種類が制限のゆるい順に紹介されています。加えてCC0があります。
| 表示 | 商用利用 | 改変 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| CC0 | 可 | 可 | 実質的に条件なし(クレジット不要) |
| CC BY | 可 | 可 | クレジット表記 |
| CC BY-SA | 可 | 可 | クレジット+改変物を同じライセンスで公開 |
| CC BY-ND | 可 | 不可 | クレジット、改変版の配布不可 |
| CC BY-NC | 不可 | 可 | クレジット、非商用のみ |
| CC BY-NC-SA | 不可 | 可 | 非商用+同一ライセンス継承 |
| CC BY-NC-ND | 不可 | 不可 | 非商用+改変版配布不可 |
読み方は記号の分解です。BY=表示、SA=継承、ND=改変禁止、NC=非営利。BYがあればクレジットが要る、NCがあれば仕事では使えない、NDがあれば加工できない、と読みます。
つまずきやすいのは3点です。NCの範囲は広い——公式説明は非商用を「主として商業的な利益や金銭的報酬を目的としない」利用としており、収益化ブログや企業の採用ページ、有料セミナー資料は商用と判断されうるため避けるのが無難です。SAは自分の作品に伝染する——CC BY-SA素材を組み込んだ改変物を公開すると、その改変物も同じライセンスで公開する必要があります。NDは「改変版の配布禁止」——公式説明は「改変していない形でのみ」の配布を認めるとしており、トリミングや色調整をして公開するのは避けるべきです。
よくある禁止事項と、その理由
理由を理解しておくと、規約に書かれていないグレーな使い方も判断できます。
再配布の禁止
素材ファイルそのものを第三者にダウンロードさせる行為です。これは利用者との契約関係を切断する行為にあたります。素材サイトは「規約に同意した人に使ってもらう」ことで不適切な利用を防いでいますが、第三者があなたのサイト経由で素材だけを入手すると、元の規約を知らないまま使うことになります。なお、デザインに組み込んだ制作物を配布するのは再配布ではありません。禁じられているのは、素材が素材のまま渡っていく状態です。
素材そのものの商品化の禁止
いらすとやは「素材を主体としたコンテンツ・商品の再配布・販売(LINEクリエイターズスタンプ等も含みます)」を禁止し、Loose Drawingも「イラスト自体をコンテンツ・商品として再配布・販売する行為(例:LINEスタンプ等)」を禁じています。イラストACも、イラストをそのままあるいは加工して「独立の取引対象として頒布」することを認めていません。
理由は素直で、それをやると素材サイトの商売と正面衝突するからです。素材を並べただけのスタンプ集を売るのは、他人の作品を転売するのと変わりません。判断の目安は「その商品から素材を抜いたら、商品として成立するか」。Loose Drawingはイラストが「コンテンツや商品のサポート・説明として構成されている場合であれば販売しても大丈夫」という趣旨の説明をしています。素材が説明役ならおおむねOK、主役ならNGです。
商標登録の禁止
イラストACは「イラストを商標登録すること、商号その他商品として使用すること」を明確に禁じています。一番「なぜ?」となる項目ですが、商標権は登録者がその標章の使用を独占できる権利です。もし1人がフリー素材を自社ロゴとして商標登録すると、同じ素材を先に使っていた他の何千人もの利用者が突然「使うな」と言われかねない状況が生まれます。素材サイトは全利用者に「みんなが使える状態」を約束しているので、それを1人が独占する行為を禁じているわけです。ロゴやブランドの中核ビジュアルにはオリジナルを使うのが原則です。
クレジット表記の書き方
クレジットが要るのは主にCC BY系と、規約で明示的に求めているサイトの素材です。Creative CommonsはBest practices for attributionで、Title(作品名)/Author(作者)/Source(出典URL)/License(ライセンスとリンク)の4要素、頭文字をとって「TASL」を推奨しています。公式の記載例は「"作品名" by 作者名 is licensed under CC BY 4.0」の形です。日本語サイトなら記事末にこう置きます。
## 画像クレジット
- [朝の山並み](https://example.com/photos/123) 撮影:[Jane Doe](https://example.com/janedoe) / [CC BY 4.0](https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)置き場所は媒体次第です。ブログなら画像直下のキャプションか記事末の「画像クレジット」欄、動画ならエンドロールと概要欄の両方、印刷物なら奥付、SNSなら投稿本文の末尾。文字数が厳しい媒体でも省略はできません。
CC公式は形式が媒体に応じて「合理的」であればよいとしていますが、合理的であるためには読者が作者と出典にたどり着ける必要があります。作者名だけ書いてリンクを省く、ライセンス名を書かない、といった省略は避けてください。なおサイト側が独自の形式を指定している場合はそちらが優先です。
主要素材サイトの規約はここが違う
以下は2026年8月時点で各サイトの利用規約を確認した内容です。規約は改定されるため、利用前に最新版をご確認ください。
| いらすとや | イラストAC | Loose Drawing | |
|---|---|---|---|
| 商用利用 | 可 | 可 | 可 |
| クレジット | 規約に要求の記載なし | 不要 | 不要(リンク紹介は歓迎) |
| 加工 | 可(著作権は譲渡されない) | 可 | 可・連絡不要 |
| 点数制限 | 1制作物に21点以上使う商用デザインは有償 | 無料会員はDL数に上限 | 記載なし |
| 素材単体の商品化 | 禁止 | 禁止 | 禁止 |
| 商標登録 | — | 明示的に禁止 | — |
いらすとやは「規約の範囲内であれば、個人、法人、商用、非商用問わず無料で」利用できるとしたうえで、有償対応となる場合を2つ挙げています。「素材を21点以上使った商用デザイン(重複はまとめて1点)」と「素材の高解像度データの作成」です。「重複はまとめて1点」という但し書きが実務上のポイントで、同じイラストを1つの資料内で10回使っても1点と数えます。つまり20種類までなら無料の範囲、素材を多用した商用のスライドやパンフレットは20種類を超えた時点で有償対応の対象です。この「1制作物あたり」という数え方は他サイトにあまりありません。
イラストAC・写真ACは、商業目的かを問わず自由に改変・編集・使用でき、クレジットも不要です。一方、無料会員には1日あたりのダウンロード上限があります(規約上は「1日に10点以上ダウンロードすること」が禁止事項で、プレミアム会員は除外)。締切のある業務で大量に使うなら事前確認が要ります。特徴的なのは前述の商標登録の明示的禁止と、許諾なくAI学習に利用することの禁止です。写真ACには別途「AI素材利用規約」があり、「1日50点以上のAI素材をダウンロードすること」を禁じるなど通常素材と条件が異なります(写真AC AI素材利用規約)。
Loose Drawingは「商用/非商用、個人/法人問わず無料でご利用頂けます」と明快で、点数制限の記載はありません。「編集や加工も可能です。連絡等は必要ありません」とも明記されています。
著作権以外に注意すべき権利
素材の著作権をクリアしても、別のレイヤーで問題が起きることがあります。
商標権:前述の登録禁止に加え、素材に他社の商標に似た図形が含まれる場合も注意が要ります。
意匠権:物品や画像のデザインを保護する権利です。素材を使ってプロダクトの外観をデザインする場合、既存の登録意匠と類似していないかという観点が別に必要です。
肖像権・パブリシティ権:人物写真では最重要です。肖像権は明文の規定がある権利ではありませんが、人格的利益として保護されると一般に解されています。素材サイトの人物写真は通常モデルリリースが取得されていますが、使い方には制限が付くのが普通です。モデルが病気・犯罪・宗教・政治などセンシティブな文脈に結びつけられる使い方や、商品を推薦しているように見える使い方は典型的に禁じられます。「サプリの広告にビフォーアフター風に人物素材を使う」といった用途は許諾範囲外であることが多く、特に注意が必要です。
写り込み:風景写真に写った建築物、アート作品、企業ロゴ、商品パッケージなどです。写真の主題が明らかにその対象である場合は別の判断が要ります。他社ロゴが目立つ写真は、広告用途では避けるのが安全です。
要するに、規約は素材サイトとあなたの間の話であって、写っている人や第三者の権利まで保証するものではないという理解が必要です。
AI生成素材の現在地(2025〜2026年)
素材サイトのAI生成素材への姿勢は、この1〜2年で明確に厳しい方向へ動きました。
PIXTAはAI生成素材の取扱いを終了しました。新規の審査申請受付を2026年4月20日で終了し、2026年5月22日をもって販売を停止。販売停止日時点で「AIチェックボックス」にチェックが入っていた作品はすべて販売停止となります(PIXTAガイド、ピクスタ プレスリリース)。理由として同社は、購入者のニーズとAI生成コンテンツとのマッチングが困難な状況が続いたこと、生成AIによらずクリエイターが自ら撮影・制作したコンテンツが従前以上に求められていることを挙げています。
写真AC・イラストACについては、2025年10月10日からAI生成素材の投稿受付が停止されたと複数の利用者・メディアが報じています。理由は審査の複雑化に伴うルール整備と、AI素材以外の審査遅延の解消。ただしこの件についてACワークスの公式発表を一次情報として確認することはできませんでした。現況は各サイトのお知らせでご確認ください。
利用者側の実務は2点です。まず、AI生成物の著作物性は一律ではありません。文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月にまとめた「AIと著作権に関する考え方について」が生成物の著作物性の考え方を整理しており、「AIが作ったものに著作権はないから自由に使える」という単純な理解は避けるべきです。次に、プラットフォームの方針は変わりえます。長期的に使うブランド資産にAI生成素材を組み込む場合は、入手経路と利用許諾の記録を残しておくことをおすすめします。
使う前のチェックリスト
慣れれば1素材1〜2分で終わります。
- [ ] 規約ページを開いたか(素材ページの説明文だけで判断しない)
- [ ] 確認した日付を記録したか(規約は改定される)
- [ ] 自分の用途は、そのサイトの定義する「商用」に当たるか
- [ ] 点数制限はないか(いらすとやの「21点以上は有償」など)
- [ ] 1日のダウンロード上限はないか
- [ ] クレジット表記は必要か。指定形式はあるか
- [ ] 加工・トリミング・色変更は許可されているか
- [ ] その素材が制作物の「主役」になっていないか(グッズ化は要注意)
- [ ] ロゴ・商標として使う予定はないか(あるなら使わない)
- [ ] 人物写真をセンシティブな文脈や推薦表現に見える形で使っていないか
- [ ] 写り込んだ建物・ロゴ・商品・アート作品はないか
- [ ] CCなら BY / SA / ND / NC を分解して読んだか
- [ ] AI生成素材なら、そのサイトのAI素材専用規約を読んだか
- [ ] 素材URL・ライセンス・取得日を保存したか
最後の項目は地味ですが効きます。制作物のフォルダに credits.md を置き、素材名・出典URL・ライセンス・取得日を1行ずつ書き足すだけで、数年後の「この画像どこから持ってきたんだっけ」を防げます。
まとめ
- 「フリー」は無料・著作権フリー・パブリックドメインの3つの意味で使われ、混同が事故のもとです
- 著作権は登録なしに発生します(第17条第2項の無方式主義)。「©がないから自由」は成り立ちません
- 「私的利用」(第30条第1項)は非常に狭く、「非商用」とは別の概念です
- CCは BY(表示)/SA(継承)/ND(改変禁止)/NC(非営利) の組み合わせとして読みます
- 商用利用OKでも、肖像権・商標権・意匠権・写り込みは別レイヤーの問題として残ります
多くの素材サイトの規約は1〜2画面程度で、確認すべき点も上のチェックリストの範囲に収まります。最初の10分が、そのサイトを使う限り再利用できます。
なお、当サイトOpomedoのイラスト素材も、商用利用可・クレジット表記不要でご利用いただけます。詳しい条件は利用規約ページに記載しています。
